第11章 彼女に福寿草を捧ぐ....
「十四松くん、最近ここに来ないね?」
時計塔の上で、彼女と並んで座る。
「うん!ちょっと忙しいんだ!」
いつもみたいに足を宙に投げ出して、ブラブラと揺らしながら笑う。
働いていることは、彼女には内緒にしていた。
「....十四松くん.... 」
なぁに?と彼女を見つめれば、彼女は重い口を開く。
「もしかして.... 私のこと.... 嫌いになっちゃった....?」
その言葉に僕は目を真ん丸くした。
そんなわけないのに....
「私が.... こんなお仕事.... してるから.... 」
彼女は左手で自分の右腕をぎゅうっと締め付ける。
「大好きだよ!!」
僕は顔を真っ赤にして、彼女に精一杯の想いを伝える。
大好きなんかじゃ、きっと全然足らなくて
でも僕の頭の中の引き出しには、この単語しか入っていない
そんな僕の一言に君は涙ぐみながら、凄く幸せそうに笑う。
「泣かないでよ?僕は君が笑ったとこが好き!」
またお得意の水の芸をすれば、君は笑って笑って青ざめても笑って
大好きだと僕に伝えてくれる。
おもしろい僕が大好きだと、何回も何回も
「そうだ、私ね十四松くんにプレゼントがあるの!」
そう言って彼女は、黄色いつつみをそっと僕に渡す。