第11章 彼女に福寿草を捧ぐ....
しばらくすると、二人はとある建物に入って行った。
なんでこんなところに入っていったんだろう?
当時の僕はその意味がなんなのか、知らなかった。
ただ、寒い中を二人が出てくるのを待つしかできなかったんだ。
身をきるような冷たい風が、頬に当たる。
冷たい手にそっと息を吐いては、かたかたと震えた。
僕なにしてるんだろ?
懐にあったマッチを一本しゅっとする。
ぽわっとその部分だけ優しい灯りに包まれた。
彼女の優しい顔を思い出しては、一本、また一本とマッチをすっていく。
最後の一本がなくなって、僕のまわりはマッチの燃えカスでいっぱいになった。
彼女への想いを全部ここで燃やしても、尽きることなんて....
僕は....
大きく口を開けながら、ぼうっと空を仰げば月が僕を見下ろしていた。
おっきな月は僕には届きそうもない。
空を飛べるのに、どうして僕は今彼女の隣にいないんだろう?
月にそっと手を伸ばす。
綺麗な綺麗なお月さま。
静かに降り積もる雪が、頭に積もっていく。
こんなことで僕は死んだりしないけど....
僕の心はどうなんだろう?
その場にうずくまる。
頭に積った雪が、僕のなにかと一緒にぼすっと地面に落ちて砕けた。