第11章 彼女に福寿草を捧ぐ....
寒い夜だった。
僕は内側が黄色いマントをたなびかせて、冬の夜を舞う。
空中で寝転ぶように、ふわりと夜空に身を任せれば、大きな月が目に留まる。
「おっきーい....」
ふわふわと浮きながら、空中をさ迷っていると聞き覚えのある声がした。
「マッチ、マッチはいりませんか....?」
ハッとして、そっと路地裏に降り立つ。
こっそりと路地裏から顔を出してみれば、そこにたっていたのは彼女だった。
この寒空の下、薄着でマッチを売っていた。
赤と白を基調としたドレス、とっても綺麗だけどなぜかしっくりこない。
昼間の清楚な感じとは全然違う。
ほどかれた三つ編みが高く結われていて、うなじが綺麗に見えた。
「お嬢ちゃん?いくらだい?」
彼女に見とれていたのもつかの間、中年の叔父さんが彼女に声をかけてきた。
「....1ポンドです」
作り笑いを張り付けて彼女は小さく答える。
「そうかい、じゃあいこうか」
叔父さんに肩を抱かれて彼女が去っていく。
....どうして....?
マッチならその場で渡せばいいのに....?
僕は首を傾げて、こっそりと二人に着いていった。
サクサクとなる音が妙に耳に響いて、不安が押し寄せてくる。
ついて行ってはいけないと僕の第六感が警笛を鳴らしていたけれど、それでもいてもたってもいられなかった。
風が吹けば、僕の頬をひんやりと冷やしていく。
雪がしんしんと降る、寒い寒い夜の出来事だった。