第11章 彼女に福寿草を捧ぐ....
「しっかり.... 捕まって.... 」
か細い腕で、懸命に僕を引き上げようとしてくれている。
だけどそんな細腕じゃ僕を支えられるわけなんてない。
「あっ.... きゃああぁぁぁぁぁ!!!」
僕の重さに耐えきれずに、一緒に地面へと真っ逆さま。
だけど、全然へーき!
だって僕は!
「うそ.... 」
彼女を横抱きにしたまま、僕は宙にふわりと浮く。
だって僕はヴァンパイアだもん!
空中飛行なんておてのもの!
「貴方は.... いったい?」
グレーの瞳が僕をうつした。
「僕?僕十四松!!!」
ぽかんと僕の腕のなかで黙るその子を、抱き上げたまま
僕は時計塔にふわりと降り立った。
「貴方.... 人間じゃないの?」
じっと僕を見つめながら彼女は、首を傾げる。
「そうだよ!僕ね!僕ね!ヴァンパイアなんだ!」
みてみて!といいながら口をあけて尖った歯を見せる。
「あっ、ほんとだ.... 噛まれたら痛そう.... 」
「うん!自分の舌噛んだらめっちゃいたいよ!」
ぱかぁっと口をあけて笑えば、その子もふふふっと口に手を当てて笑った。
灰色の雲からちらちらと降る雪が、僕らの出会いを祝福してるみたいに見えた。
幸せな時間の始まり....