第11章 彼女に福寿草を捧ぐ....
黄色いパーカーに着替えている十四松くんを、見ないように違う方向を向きながら尋ねる。
「そう言えば、さっき十四松くん歌歌ってたよね?」
何故か返答が返ってこない。
「スゴく、綺麗な声だったから聞き惚れちゃったんだ」
「....最初から.... 聴いてた?」
十四松くんにしては、小さな声で私に語りかける。
「うん、なんだか悲しい歌詞だったけど、誰の曲?」
一番と二番の歌詞は、とっても素敵だったのに何故か三番はとても悲しくなる内容だった。
「誰の曲でもないよ.... 僕が適当につくった歌だから」
えっ?と後ろを振り向こうとする前に、背中に暖かい体温を感じる。
「十四松くんが.... つくったの?」
いつも元気そうな十四松くん、そんな十四松くんからは想像できない歌の内容だった。
「.... そう.... 」
私の後ろで三角座りをしながら、自分の足に顔を埋めているのが湖に映っている。
「....十四松くん?」
「...ごめん、少し思い出しちゃって、最近おおい.... や.... 」
さあっと一陣吹く風が、途切れそうな言葉を連れて空へと舞がる。
言葉を完全にかき消してしまうように....
そんななかで、黄色い小さな花が悲しげに揺れた。