第10章 ミルフィーユは抹茶味で
カランコロンとアイスティーの氷同士がぶつかる音がする。
「....ねぇ、僕鈴音ちゃんの役にたててる?」
唐突な質問に、チョロ松くんの方を見れば何故だか少し悲しそうな顔をする。
「もちろん!それどころか大助かりだよ!」
にこりと微笑めば、よかったと笑う。
「今朝は.... ごめんね.... 」
カランコロンとなるのは、チョロ松くんの飲んでいるアイスコーヒー。
「僕、鈴音ちゃんがメイド達に酷いことされたのになにも出来なかった.... 」
ぐっと右手に力を入れて、眉を下げる。
「傷を.... 治してあげることさえ.... 」
下を向きながらそう言ったチョロ松くんの消え去りそうな声は、震えていた。
「....治そうとしてくれたでしょ?」
あの時止めてよかったものかと、考えながら上を向く。
「僕が....弱いから治せなかったんだ....僕の意思が弱かったから.... 」
異端者と呼ばれ続けた優しいチョロ松くん....
彼の心の傷を治すには、どれくらいの時間がかかるんだろう?
こんなに心を痛めている彼に私はなにができるんだろう?
そこに答えなんて出ない。