第9章 メイドは冥土を統べる
久方ぶりのご飯だ、味わって食べなければ....
「いっただきまーす!」
サワラの塩焼きに手をのばして、お箸で身をほぐす。
焼きたてのサワラは、白い身からほわっと湯気をたてて私の食欲をかきみだす。
白い身を食べやすいくらいに取り分けて、骨を横に避ける。
あーーんと口を開けて、食べようとしたその時だった。
ふいに真横に体温を感じたかとおもうと、お箸で挟んでいたサワラの身が消えている。
「ンマーイ!さっすが松代ー!」
あっかるい声が私の頭上から聞こえてくる。
....サワラが....
私の、私のサワラ....
「何してくれとんじゃ、馬鹿松.... 」
くるーりと後ろを向いて、私のサワラをとったミソカス野郎に微笑む。
「いやー、そんな怒んないでよー」
私が身をほぐして食べやすくしたサワラをむぐむぐしながらニカッと笑う馬鹿。
「おそ松坊っちゃん、人のものをとるなんて私は嘆かわしい.... 」
ずしゃあっと地面に足をつけてよよよっと両手で顔を隠す松代さん。
「私の育てかたが間違ったのかしら、松代は松代は悲しゅうございます!」
うおおっと嘆く松代さんに、さすがに全力でフォローする。
「い、いえ、なにも魚の身一つでそこまでならなくても大丈夫ですから」
その一言にケラケラ笑って
「だよねー、おそ松くんもそう思うわー」
いや、お前のせいだからね?
事の発端はお前だから!