第9章 メイドは冥土を統べる
「あーいいお湯だったー」
そんな一人言を言って、部屋に戻ってみれば黒い人影が一つ。
「....誰?」
私の一言にその人物はくるりと後ろを向いてにっこりと私に笑いかけた。
「あら、歳には勝てないものねぇ.... 」
なんて少し眉を下に下げる。
白髪の混じった髪の毛と、眼鏡が印象的だ。
歳は50後半あたりだろうか。
「お初に御目にかかります。鈴音様。私は松野家のメイド長をさせていただいております。松代と申します。」
松代さんは左足を引き、右足を軽く曲げつつ、背筋をピンと伸ばし、軽く腰を曲げる。
踝まである黒いワンピースに、白いエプロン、白いキャップ、黒いブーツ。
エプロンのポケットには黒い松の模様がさりげなく刺繍されている。
正統派のメイド服だ。
昨日馬鹿松が私に着せたのとは大違いのやつ。
「えと、初めまして.... 」
完璧なるメイドさんとやらに会えたのに、このピンクピンクした部屋では異色すぎて、なにが正しいのかわからなくなってくる。
やばい、感覚が狂ってきたんだろうか。
「ぼっちゃん達から、話は伺っております。でもまずは....朝食を 」
にこりと微笑まれて、こちらもにこりと微笑み返す。
どうしよう、慣れなさすぎてどうしていいかわかんないんだけど....