第8章 猫は紅い血に染まる
「私は見られてるのに、一松くんはそうじゃないじゃん」
喘ぐのを我慢しながらそういった。
私だって一松くんの顔を見たい。
はぁっと一つため息が下から聞こえる。
その瞬間視界が少し眩しくなった。
「ほら、これでいいでしょ?」
ふいっと違う方向を向きながら、そういわれる。
耳まで赤くしているのがわかると、愛しいという感情に襲われる。
「....一松くんて可愛いね」
ぽつりと発する言葉に、ますます耳を赤くしてバカなの?なんてそんなことをいう。
それでも、そっぽをむきながらも頭を撫でる手は優しくて心地よくて
この人は、本当に不思議の国のアリスのチャシャ猫のようで....
でもそれを口にすることはないまま....
きっとまた悲しそうな顔をするから....
「....そんな切ない顔しないで」
あぁいけない、顔にでてしまってたみたいだ。
「ごめん....んんっ!!?」
頭を撫でていた指先が優しく足を撫でる。
手が冷たいからだろうか、一松くんが撫でた感触が肌に残る。
少しづつ少しづつ核心へと責める指先がもどかしくて、両足を閉じようとする。
でも、その行動を冷たい手が止める。
にやりと笑う顔
本当に一松くんってチャシャ猫にそっくり....