第8章 猫は紅い血に染まる
鈴音を抱き締めた。
手がカタカタと震える。
怖かった。
ーーオレの物にできたらいいのにー
そんなドス黒い考えが、頭のなかを駆け巡る。
それでも後一歩の所で踏みとどまるのは、鈴音が大切だからなのか、それとも自分が臆病者だからなのか....
ただ抱き締めることしかできないオレに、鈴音はぽつりと呟く。
「一松くん.... 私ね.... トド松くんのせいで、まだ体が熱いの....だから.... 助けて.... ? 」
ぎゅうっと捕まれる腕、カタカタと震える手がその言葉が嘘なんだということを容易にわからせる。
「....そんなに苦しいの?」
耳元でそっと囁く、オレの声も震えていた。
「うん.... 熱が.... ひかないの....だから.... 」
なんで、そんなに優しいんだろうね....
鈴音は....
「だから.... なに....?」
にやっと、笑って口にする言葉は自分が相当のクズだと思い知らしめる。
腕の中から顔をあげてオレをじっと見つめる。
綺麗な目だ。
強い強い光。
「一松くん.... 私を.... 抱いて....?」
.... 鈴音
ずるくて
ごめん....