第4章 初めてのおもてなし
チョロ「まず、これが冷蔵庫ね。」
『はい…。』
冷蔵庫ってこんなに大きかったっけ?
両扉式の立派な冷蔵庫に少し感動する。
チョロ「食材は定期的に送られてくるからストックは常にあるんだけど、俺達すぐ出前とっちゃうからさ。面倒臭がらずにちゃんと作らないとだよな~。」
『専属シェフとか…そんな方はいないんですか?』
チョロ「いないよ。その辺にお金かけたくなくて雇ってないんだよね。」
『そうなんですね。』
チョロ「料理は時々トド松がするくらいかな?だから結構有り余ってるんだよね。全部好きに使って良いから。」
『分かりました。』
チョロ「何か質問ある?」
『…えっと、特に苦手な食べ物とかありますか?』
チョロ「うーん…不味いもの?」
『…なるほど。』
そこを…具体的に知りたかったな…。
チョロ「美味しかったら何でも食うよ、俺達。」
『分かりました…。』
どんどん増すプレッシャー。
チョロ「じゃあ後は任せるよ。分からない事があったらまた聞いて。」
『はい!ありがとうございます。』
料理なんて久しぶりだけど…皆お腹空かせて待ってるし、美味しくないものは作れないし、頑張らないと…!
チョロ「ねぇ」
キッチンから出ようとした足を止め、意気込む私に声をかけるチョロ松さん。
『はい?』
チョロ「君さ、良かったの?」
『…え?』
チョロ「自分が望んだんじゃなくて、勝手に連れ去られてここに来たんでしょ?君…自分の気持ちを一言も言わないからさ。」
振り返ったチョロ松さんと目が合う。
『…。』
良い…という訳ではない。
正直、怖い。
でも今ここから逃げ出したとしても、行くあても無ければお金も無い。
心の中では自分の思いがたくさん浮かぶのに、私はそれを言葉にして出すことができなかった。
チョロ「…まぁ、嫌なら隙を見て出て行くか。」
チョロ松さんが背中を向ける。
『…あの、』
チョロ「もし、君が逃げたとしても」
『っ…?』
チョロ「わざわざ追ったり、殺すことなんてたぶん無いから。」
最後にそう言い残し、キッチンを出て行った。
『…。』
"ここへ居ることの強制はしない。逃げたいならいつでも逃げれば良い。"
きっと、そういうことだろう。