第8章 Testimony
「こりゃどうも、あんたが弁護士さん? 自分が社長の長瀬です」
そう言って長身の男…長瀬さんが岡田に右手を差し出した。
「お忙しいのにすいません」
岡田が長瀬さんの手を握る。
「で、”侑李”君は…?」
「あぁ、侑李ならそこに…。
おい、侑李ちょっと…」
長瀬さんが工場の奥に向かって手招きをする。
「…はい」
奥から小走りで駆けてきたのは、女の子と言っても通るような風貌の、色白で小柄な少年。
見たところ未成年か、よく言っても二十代前半と言ったところだろうか?
「コイツが侑李です。おい、侑李、この人達がこの間話した弁護士さんだ」
「知念侑李です。大野君のこと、ですよね? あの、僕でお役に立てるかどうか…」
頭に被った帽子を取り、胸の前で両手でクシャッと握り締める。
緊張しているのか、その表情は強張っている。
「あの長瀬さん? 少し彼をお借りしても?」
「あぁ、構いませんよ。なんなら工場の奥に応接室あるんで、使ってやって下さい」
「それはありがたい。ではお言葉に甘えて」
岡田が柔らかく笑って頭を下げる。
こちらへどうぞ、と長瀬さんが俺達を工場の奥へと促す。
「足元気ぃつけて下さいね? 散らかってますんでね…」
革靴を履いた俺達を気遣う長瀬さんが、申し訳なさそうに頭をペコリと下げた。