第8章 Testimony
揃って応接室に入ると、長瀬さんが工場に面した窓ガラスにブラインドを下ろした。
外から見えないようにとの配慮なんだろう。
「どうぞ、むさ苦しいトコですが、座って下さい」
互いに名刺を交換し合うと、俺達は三人並んでソファーに腰を下ろした。
テーブルを挟んだ目の前には、長瀬さんと侑李が座っている。
岡田が公判資料を挟んだファイルをテーブルの上に開き、そしてボイスレコーダーを取り出すと、メモ帳とペンを手にした。
「念の為に録音させて頂きますね?」
岡田が一言断りを入れてから、ボイスレコーダーのスイッチを押した。
「今からいくつか質問させて頂きますが、正直にお答え下さいね?」
場合によっては彼の証言が、事件の重要な手がかりになるかもしれない。
「そんな緊張なさらずに…。我々はお話を聞きたいだけですから」
目の前で緊張に凝り固まっている侑李に、岡田がやんわりと口調で話しかける。
実際、“弁護士”なんてのを目の前にしたら、緊張して当然だろな。
「まず、侑李君は今回の大野さんが起こした事件のこと、知ってるよね?」
岡田が口火を切る。
「は、はい。テレビのニュースで知りました」
「それを見た時、君はどう思った?」
瞬間、侑李の瞳が大きく揺らいだと思うと、帽子を握った手に力が篭められた。