第8章 Testimony
目の前でフワフワと笑う深山さんは、思ったよりも若い印象を受ける。
「お待たせ。ゆっくりしてってや」
茂さんが三人分のコーヒーを運んでくる。
淹れ立のコーヒーの香りに、ささくれた心が少しだけ癒される気がした。
「あぁ、深山、コイツが…」
「櫻井さんでしょ? 班目法律事務所にいた」
岡田の言葉を遮って深山さんが身を乗り出す。
「知ってたのか?」
驚いた様子で顔を上げた岡田に、深山さんは当然とばかりにニコリと笑顔を見せた。
「だって有名だよ? だって俺も今、班目法律事務所でお世話になってるから」
えっ?
そんな話、聞いてない…
動揺する気持ちを抑えきれず、隣の岡田に視線を向ける。
「聞いてねぇけど…?」
岡田がコーヒーカップを握ったまま固まる。
「うん。言ってないから」
深山さんがシレっと言い放ち、カップを口に運ぶ。
「お前なぁ…」
「そんなことより、どこまで調べは進んでんの?」
コーヒーを一口啜り、カップを皿の上に置くと、深山さんの表情が一変した。
もうさっきまでの柔和な印象は影を潜めている。
「あぁ、それなんだがな? 櫻井…」
急にフラれて一瞬焦るが、俺は鞄の中からこれまでの公判記録と、自分なりに調べ上げた事をメモした手帳をテーブルの上に広げた。