第8章 Testimony
堪らず顔を覆ってしまった俺の肩を、岡田の腕が抱き寄せる。
「馬鹿だな、お前…」
俺にしとけばよかったのに…
独り言のように呟いた言葉に、俺は驚いて顔を上げる。
「今、なんて…?」
「な、なんでもね~よ」
視線の先に、少しだけ頬を赤く染めた岡田の顔があった。
「さ、行くぞ? 俺あんま人待たせんの好きじゃないんでな」
誤魔化すように言って俺を解放すると、目の前の階段を足早に駆け下りて行く。
「ほら、急げ!」
階下から俺を見上げる、岡田が檄を飛ばす。
「お、おぅ…!」
それに応えるように、俺も階段を駆け下りる。
「あぁ、そう言えば…」
俺が階段を降り切るのを待って、岡田が何かを思い出したように口を開く。
もういつもの岡田と変わらない。
その様子に、俺は少しだけホッとする。
「俺の同期…”深山”ってんだけどな? ちょっと変わってるっていうか…とにかく会ってみれば分かるんだが、変な奴なんだよ。ただ仕事は確実な奴だからさ…」
「分かった。岡田が信頼を置ける相手なんだろ? だったら俺も安心だよ」
二人で肩を並べてビルを出ると、茂さんの喫茶店へと歩を進めた。