第8章 Testimony
「落ち着けって櫻井、な?」
岡田が掴んだままの俺の手首を開放し、その手を俺の肩にポンと乗せた。
「…で、でも!」
言いかけた俺の言葉を、岡田の鋭い視線が制する。
「なぁ櫻井。この間から思ってたんだけどな? お前、この件から手ぇ引け」
岡田の口から吐き出される信じ難い言葉に、俺は一瞬眩暈にも似た感覚を覚える。
「今のお前じゃ、大野の冤罪を証明する前にお前が潰れるぞ?」
「お、俺は…」
反論したいのに、続く言葉が出てこないのは、俺自身がそれを痛いほど感じていたから。
でも俺がこの件から手を引いてしまったら、誰が智君を?
「どうする、櫻井? お前次第だぞ?」
答えを迫る岡田の、真剣な眼差しが俺を見つめる。
「手、引くか?」
もう一度聞かれるが、俺の答えはとうに決まってる。
「手を引くつもりはない」
岡田の目を真っすぐに見据え、俺はきっぱりと言い放った。
「お前の言う通り、俺は冷静さを失っていたのかも知れない。…いや、実際智君のことを考えれば考えるほど、周りが見えなくなっていたのは事実だ。でもな、岡田…」
それまで堪えていた物が頬を伝う。
「俺しかいないんだよ、智君を救えるのは…」
だから、俺に…
俺にチャンスをくれないか…?