第8章 Testimony
指が痺れるくらい重い荷物にほとほと嫌気を感じながら事務所に着くと、挨拶もろくにしないうちに岡田に外へ連れ出された。
「ちょ、ちょっと…所長に挨拶…」
「んなもん、どうだっていいよ」
「いや、でも…」
戸惑う俺の手から鞄を取り上げ、空っぽになった手を岡田の手が引っ張り、ズカズカと廊下を歩く。
「なぁ、待てってば…」
丁度階下へと降りる階段に差し掛かった所で、岡田が急に足を止める。
「所長には俺から話さしてあるから、気にすんな」
気にするなと言われても、礼儀には厳しい環境で育ったせいか、挨拶すらしていない事に、何だか気が引けて仕方がない。
「“侑李”に会いに行く前に、お前に会わせたい奴がいるんだ」
「俺に会わせたいって、誰だよ? 事件の関係者?」
「いや、俺の同期なんだけどな? 忙しい奴でさ…。今茂さんとこいるんだわ…」
突然の事態に、頭の中で今起きていることが整理出来ない。
「ちょっと待って? その人は事件の関係者でも何でもないんだろ? だったら会うだけ無駄なんじゃ…」
俺には無駄な時間を過ごしている暇なんてない。
早く“侑李”の元へ…
逸る気持ちが抑えきれず、つい早口で捲し立てる。