• テキストサイズ

Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第7章 Order


瞬間呼び起される記憶。

独居房で俺を拘束した上に、無理矢理抱いたあの男。

アイツの指にも確かリングが嵌まっていた筈。

もしかして、井ノ原先生が…?

いや、そんな筈はない。
この見るからに人の良さそうなこの人に出来る筈がない。

それに第一声が違う。

あの時のアイツの声は、今でも耳の奥に焼き付いて離れない。

思い出したくないのに…

「どうした? 顔色悪いぞ?」

手を止め、黙り込んでしまった俺を、心配顔の井ノ原先生が覗き込む。

「い、いえ、何でもないです…」

すっかり失せてしまった食欲に、俺は手に持ったままだった箸をトレーに揃えて置いた。

「もういいのか?」

「…ごちそうさまでした…」

井ノ原先生が俺の前からトレーを下げ、それを手に椅子から腰を上げた。

「さ、そろそろ行かないとな」

柔らかい笑顔が俺を見下ろす。

「なぁ、大野? クドイ様だが、もう二度とすんなよ?」

「…分かってるよ」

何度も繰り返される言葉に、半ば辟易としながらも言葉を返す。

「もうしないから…」

俺が言うど井ノ原先生の顔が一瞬真剣な物に変わる。

「もしも…もしもまた逃げ出したくなったら、俺の所へ来い」

愛の告白にも受け取れるような言葉に、俺の顔が熱くなる。
/ 609ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp