第7章 Order
「まだ少し熱があるようだな? ま、もう2.3日はゆっくり休むといいよ」
俺の額と自分の額を交互に触りながら、井ノ原医務官が言う。
「あの、一つ聞いてもいいですか?」
「おっ、なんだなんだ?」
「俺、どうしてここに?」
目が覚めた瞬間から気になっていたことを、俺は口にした。
俺が今こうして生きてるってことは、誰かが俺を助けてくれたってことだ。
それが誰なのか、俺はずっと気になっていた。
だってここには俺のことなんて”玩具”程度にしか思っていない奴らばかりだから。
「あぁ、それね? う~んと、誰だったっけかな?」
井ノ原医務官が顎に手をかけ、遠い目をして首を捻った。
「あっ、そうだ思い出したぞ! 確か、松本って言ったか? お前とは同房だとか言ってたけど…」
松本が?
どうして俺を助けたりなんか?
「俺が駆けつけた時、えらい血相を変えてお前さんの名前呼んでたなぁ…」
嘘だ…
松本が俺を助けたりするもんか…
「最初にお前さんを発見したのも、松本だって話だぜ?」
俺をここまで追い込んだ松本が…?
笑わせるな…!
「そうですか…」
「とにかく今は余計なことは考えず、ゆっくり休むことだ」
引き出しから冷却シートを一枚出すと、それを俺の額に張り付けた。
スッとしたメントールの匂いに誘われるように、俺はゆっくり瞼を閉じた。