第7章 Order
「あ、あの…」
言いかけた俺に、医務官が柔和な笑みを浮かべたまま”ん?”と首を傾げる。
「俺…」
「言いたくなさそうだな。 ま、無理にとは言わんから安心しろ? それに俺は他の奴らとは違って、お前に刑罰を与える権利も持ってないしな?」
胸の前で組んだ腕を解き、膝をパンと叩くと、医務官が一つ溜息を零した。
「…すいません」
「別に謝ることはないよ。ただな、さっきアイツにも言ったが、どんな世界にも”秩序”ってのがあるんだ。ソイツが守れない奴は、例えどんなお偉いさんだろうと”罰”を受けなきゃならんのだよ」
剛に入れば郷に従え、ってことか…
「…はい」
「まぁ、そんな”秩序”なんて糞食らえ、だけどな?」
そう言って医務官が俺に向かってウィンクをして寄越す。
「あぁ、そう言えば自己紹介がまだだったな? 俺はここで医務官をしている井ノ原だ。お前は?」
「俺は、700…」
「番号を聞いてるんじゃないよ、名前だよ」
つい習慣で番号を言いかけた俺に、井ノ原先生がクスクスと揶揄うように笑う。
「大野…、大野智、です…」
「大野か…。ま、よろしく頼むわ」
そう言って伸びて来た右手が、俺の額に触れた。