第6章 Alibi
どレだけの時間そこにそうしていたのか…
窓の外は白々と夜が明けていく。
まだ夢の中にいるような気がして、ベッドの上に視線を向けてみるけど…
そこにあなたがいる筈なんてなくて…
「…智君…?」
掠れた声で名前を呼ぶ。
返事が返ってくるわけないのに…
その時、リビングの方でカタンと物音がした。
「さと…? 智…?」
壁に凭せ掛けた身体を起こし、足早にリビングへと向かう。
「智、いるの? ねぇ、返事してよ…。ねぇ、さと…」
開け放ったリビングの扉の向こうに広がる景色は、いつもと何ら変化のない、物で溢れた空間。
「いるわけないよな…。だって君は…」
窓の外に視線を向ける。
この空は君の所まで続いているんだろうか?
ぼんやりと考えていると、寝室で鳴り響く着信を知らせるメロディー。
寝室に戻り、スマホに表示された名前を見る。
岡田?
俺は着信が途絶える前にと、スマホを操作して耳に宛てた。
「もしもし、岡田?」
「櫻井か? 悪いな休みの日に…」
「いや、別に構わないけど…。珍しいな…」
事実岡田から休日に電話がかかってくることなんて、今まで一度だってなかった。
良い知らせなのか、それとも…
俺は岡田が次に発する言葉を、ただじっと待った。