第6章 Alibi
二人でシャワーを浴び、濡れた髪をタオルで拭きながら智君がキッチンに立つ。
「温め直さないとな…」
すっかり冷めてしまったカレーに再び火を入れる。
俺は別に冷たいカレーでも構わないけど、智君はそうじゃないらしい。
お互いそれほど食に興味があるわけでもないのにね?
「手伝うよ」
棚から皿を二枚出し、炊飯器からご飯をそこに盛る。
「おい、俺そんなに食えねぇって…」
俺基準の山盛りご飯を見て智君が苦情を言う。
「残ったら俺が食うから」
「またデブるぞ?」
智君がクスクス笑いながらガスの火を止めた。
「よし、食うか」
山盛りご飯にタップリのカレーをよそい、二人で並んでカウンターに座る。
「いただきます」
手を合わせ、同時にスプーンを手にする。
カレーを掬い、口に運ぶ。
智君はそんな俺の姿を黙ったまま見つめる。
「うんめぇ!」
「マジで?」
嬉しそうに顔を綻ばせ、漸く智君がカレーを口に運ぶ。
「あ、ほんとだ、美味い」
「でしょ?」
俺は智君の作ってくれるこのカレーが、どんな高級な料理よりも好きだった。
食事が終わると、全身にかいた汗を鎮めるように、二人でビールを楽しむ。
その後は、小さなベッドで互いの体温を確かめながら眠りについた。
朝の光に目覚めた時、あなたの笑顔がいつもそこにあった。
束の間の至福の時間…。