第6章 Alibi
「しょ、翔…、苦しいよ…」
首筋に鼻先を寄せ、智君の匂いを嗅ぐ。
カレーの匂いに混じって智君の甘い匂いが鼻を擽る。
「どうしたの? 何かあった?」
違う、そうじゃない…
「…会いたかった」
つい一週間前にあったばかりなのに、もう会いたくて堪らない…
「翔? 先お風呂入ってきたら? 」
フワッと笑って鍋に戻す視線を、顎を掴んで俺に向ける。
「どうしたの? ほら、早…っ…」
続く言葉を唇で塞ぐ。
性急に唇を割開き、その奥の赤く熟れた舌を絡めとる。
「…ん、ふっ…んん…」
智君の口の端から零れる吐息が、クツクツと音を立てる鍋の音を掻き消した。
抱き締めた腕に力を込め、腰を押し付ける。
「…んん…!」
ほら、キス一つで君だって…
唇を離し首筋に移動させる。
「ふっ…ダメ…カレー、焦げ…」
しきりにカレーを気にする智君のシャツを捲り上げる。
「飯より、先に智が欲しい…」
そう耳元に囁けば、途端に真っ赤に染まる頬。
「俺も…翔が欲しい…」
漸く素直になった智君をシンクの縁に座らせる。
捲り上げたシャツを頭から抜き取り、上半身を露わにすると、小麦色に焼けた胸が呼吸に合わせて上下する。
華奢な割に、程良く筋肉のついたその胸にそっと唇を寄せた。