第40章 Everyday…
きっと笑うだろうと…、真底呆れられるだろうと思っていた。
でも智君は、情けなく涙を零す俺の背中を、機械油に塗れても尚綺麗な手で撫で続けた。
「笑ってもいいんだよ? 情けない奴だって…、みっともないって罵ってくれてもいいんだよ?」
だって実際そうなんだから…
相手が松本だからじゃない、ただ俺以外の奴と間接的にではあるけどキスをしただけ…
俺以外の奴が智君の肩に触れただけ…
たったそれだけのことなのに、見苦しいまでに嫉妬に狂う、ちっぽけな男なんだと…
「笑わないよ…? 俺、笑ったりしないから…」
「で、でも俺…」
自分の醜い嫉妬から、君を傷付けようとしたのに…?
「なんて言うか…さ、自分で言うのも照れ臭いんだけど、それって俺のこと、それだけ愛してくれてるから…なんだよな?」
「えっ…?」
思いがけない智君の言葉に、咄嗟に顔を上げた俺の視界から逃げるように、智君が仄かに赤くなった顔を背けた。
俺はその顔を両手で挟み込むと、微かに熱を帯た頬を指の腹で撫でた。
「うん…、愛してる。君のことしか見えないくらい、愛してる…」
智君を繋ぎ止めておくための嘘や偽りでもなく、心の底から俺は智君を愛している。
それだけは例え誰に何を言われようと、胸を張って言える自信が俺にはある。