第1章 Falldown
背後でペチペチとゴムが擦れるような音がした。
「力抜いて」
何度されても慣れない行為に、全身に緊張が走る。
「いくよ?」
言うと同時に、俺の中に異物が侵入してくる。
グルグルと指で中を探りながら、検査員の指は俺の前立腺を掠める。
コイツ、男知ってやがる…
油断すれば口の端から零れそうになる吐息を、ギュッと唇を噛んで耐える。
早く終わらせろよ…
俺の思いとは裏腹に、検査員の指は更にソコを責め立てる。
「なんだお前、感じてるのか?」
耳元に寄せた口から、溝臭い臭いが吹きかけられる。
込み上げるモノを吐き出すことも許されない俺は、じっと耐えることしか出来ない。
「はい、次…」
漸く開放された俺に渡されたのは、胸に番号を書かれた、所謂“囚人服”と、やはり番号の書かれた下着。
隣室に通され、数々の汗の臭いが染み込んだそれを身に着ける。
7005番…これがここでの俺の”名前”になる。
その後、揃いの服を着せられた俺達は、理容室に連れて行かれた。
横並びに座らされ、手には再び手錠をかけられた。
剃刀や鋏といった類いの、扱い方を間違えれば“凶器”にも変わる道具が無数にあるこの場所では、それも仕方の無いことなのかもしれない。
目の前に、翔が好きだと言った俺の髪がハラハラと落ちて行く。