第1章 Falldown
理容専門の刑務官に依って丸刈りにされた俺達は、刑務官を先頭に縦一列に並べられた。
手には洗い替えようにと用意された服と下着。
そして洗面用具などの、最低限の生活用品だけを持たされた。
俺達はそれらを手に、足並みを揃えて長い廊下を歩く。
列を乱すことは許されない。
尤も、四方を刑務官に囲まれた状況で、列を乱そうなんて考えなんて湧いては来ないけど…
いくつもの鍵のかかった鉄格子を潜り、漸くこれから俺達が生活をする“房”に着く。
順に番号を呼ばれ、畳二畳程の個室に入っていく。
そして俺の番が回ってきた。
「7005番、入りなさい」
刑務官に促され、くたびれたスリッパを脱いでそこに足を踏み入れた。
安っぽいフローリングの部屋には、薄っぺらな布団が一組と、簡易的な洗面所、そして腰ほどの高さしかない衝立で仕切られた便器。
自殺防止のためか、タオルの一つですら置いてはいない。
「そこに座りなさい」
言われるがまま俺は部屋の中央に、正座の格好で腰を下ろした。
瞬間、ガシャンと大きく重い音を立て、閉じられた鉄の扉。
一週間…
俺は一週間この薄汚れた独房で、自分の犯した罪と向き合い、俗世での自分を捨てるための生活を強いられるのだ。
尤も、俺には“犯した罪”なんてないのだから、何をどう反省したらいいのかも良く分からない。
でも、もしも俺に“罪”があるとしたら…
それは翔を泣かせたこと…なのかもしれない。
Falldown 完