第40章 Everyday…
機械油と汗の匂いが染み込んだTシャツを捲り上げ、同じ性を持つ男とは思えない、滑らかな肌を手で撫で回す。
深く重なったままの唇の端からは、どちらの物かも区別のつかない唾液が溢れ出した。
こんなの間違ってる…
こんなんじゃ駄目だ…
俺は智君を傷付けたいわけじゃない。
そう思ったその時…
それまで息苦しさから逃れようと、必死で藻掻いていた智君の手が、パタリとその動きを止めた。
「智…君…?」
唇を離し、名前を呼んでみる。
必死になり過ぎて気付かなかったけど、咄嗟に俺から逸らした両目は、真っ赤に充血していて、今にも溢れ落ちそうなくらいに、涙が溜まっていた。
「ごめ…ん…、ごめんね、智君…」
相手の気持ちなんてこれっぽっちも考えない一方的なセックスが、これまで智君にどれだけの恐怖と屈辱を与えて来たか…、俺はそれを嫌って程分かってた筈なのに…
なのにこんな…
「いいよ…、謝んなくて…」
「で、でも…」
「いいって…。それより飯にしようぜ? 腹減った…」
「う、うん…」
呆然と立ち尽くす俺の前で、ダイニングテーブルに押し付けられた身体をゆっくりと起こす智君…
でも余程怖い想いをしたのか、両足が床に着いた瞬間、細い身体がグラリと大きく揺れた。