第40章 Everyday…
そんな有る日、暇を持て余している俺の元に、智君の雇用主でもある長瀬さんから、一本の電話が入った。
電話の内容は、仕事の宛てがないのなら、自分の工場で働かないかというものだった。
保護司の立場でもある長瀬さんのことだから、俺の現状に業を煮やしてのことだったんだと思う。
それまで何十件と面接に行っては、断られて来たのを知っていたから…
でも俺はその有り難い話を断った。
元々俺は手先も不器用だし、刑務所内の作業だって、ポンコツもいいとこだったし、工場仕事には不向きだってことは分かっていたから。
でもそんな俺に長瀬さんは、経理を担当する事務員のポストを用意すると言ってくれた。
数字には割と強い方だし、事務の職であれば、これまで培って来た経験も多少は活かせる…
そう思った俺は、長瀬さんの話を受けることにした。
何より、智君と一日中一緒にいられる…
その事が一番の理由だった。
でも…、“でも”なんだよな…
長瀬さんの工場に勤めるってことは、即ち松本の顔を毎日見ることになる、ってことで…
松本が過去に智君にして来たことを、何時までも恨んでいるわけではないけど、やっぱりどこか複雑な心境にもなる。
しかも、だ…。
俺が見ている前で、これ見よがしに智君の肩を抱いたりした日には、流石の俺も頭に血が上るのを感じずにはいられなかった。