第39章 Daylight
「ま、櫻井のことは深山に任せておけば安心だろ。多少時間はかかるだろうが、悪いようにはしないだろうさ」
紫煙を吐き出し、空いた手で俺の肩を叩く。
「そうだな…」
今は岡田の言葉を信じるしかない。
俺は氷が溶けてすっかり薄くなったコーヒーをストローで吸った。
「ところでお前この後はどうすんだ? 行く宛はあんのか?」
「どうするも何も…」
裁判が終わってから出所までがあっという間で、そんなことを考える余裕なんて、これっぽっちも無かった。
「もし何も決めてないようなら、俺んトコ来ませんか? 勿論、住み込みで…」
「うん、兄ちゃんそれがいいよ。そうしなよ」
長瀬さんの有難い提案に、侑李がはしゃいだ声を上げる。
「いやでもそこまで長瀬さんに甘えるわけには…」
それに長瀬さんの所には松本もいるし…
別に松本が嫌いなわけじゃない。
でもいくら帳消しにしたって言っても、やぱりあの時の恐怖感だけは、どうしたって記憶から消せるわけじゃない。
「俺、さ…、出来れば翔のマンションで暮らしたいんだけど…。駄目、かな?」
翔が出てきた時、アイツにだって帰る場所が必要だから…
「待っててやりたいんだ、翔のこと…。アイツが俺のこと信じて待っててくれたように、俺も翔のこと…」
翔との想い出が沢山詰まったあの部屋で、アイツが美味いって言ってくれたカレーを作りながら、アイツの帰りを待っていたいんだ。
俺にはそれしか出来ないから…