第38章 Apology
「確かに、母さんとは子供の頃に別れたっきり、ずっと会っても無かったし、電話の一本もありませんでした…。それがヤク中で逮捕されてたなんて…」
ずっとずっと待ってたのに…
いつか母さんが迎えに来てくれる、って信じて俺は待っていた。
だけどあの人は来なかった。
でもそれは、俺が児童養護施設に保護されたせいで、行方が分からなくなってるからだ、って…
俺はそう思っていた。
それがまさかヤク中だったなんて…
「なるほど…、つまりその弁護士は、母親の刑期の軽減を引き換えに、貴方に自白を強要した…と、そう言うことですね?」
「はい…」
「疎遠になっているにも関わらず、貴方はその条件を飲んだ…。幼い貴方に、惨たらしい仕打ちをした挙句、貴方を捨てたのに、ですか?」
それでも俺は…
「仕方ないじゃないか…。どんな仕打ちをされたって…、例え捨てられたって…母さんは母さんなんどから…」
天涯孤独の俺にとっては、唯一の“肉親”と呼べる存在を、俺は簡単に切り捨てることは出来なかったんだ。
「喜多川の社長と、その弁護士は、その貴方の弱い部分に付け込んだ…と?」
「…だと思います」
じゃなきゃ、そうタイミング良く母さんの話なんて持ち出したりはしないから…
「お母さんの刑期を軽くしたいがために、貴方はやってもいないことを“やった”と自供した…。そう言うことで宜しいですね?」
「はい、その…通りです…」
今思えば、全ては俺の弱さが招いたことだったんだ。