第38章 Apology
「私の質問の仕方が悪かったようですね…」
仕方ない、とばかりに岡田が肩を竦める。
「では質問の仕方を変えましょう。貴方が逮捕拘留された際、私達国選弁護人以外に、貴方に接見を申し出た人はいましたか?」
言われて俺は、もう随分昔の事のように薄れかけた記憶を脳裏に巡らせた。
「確か…喜多川の社長と、それから社長と縁のある弁護士だって人が一人…。それ以外はいなかったと思います」
「なるほど…。ではその時の会話は覚えてますか?」
「はい…」
あの時の会話は、忘れたくたって忘れられる筈がない。
「ではその時の会話を、覚えていり範囲で構いませんので、話して貰えますか?」
「社長は兎に角俺に自白するようにと言いました」
「ほお…、その時貴方はなんと答えたんですか?」
「否定しました。やってもない事を認めたら、それこそ罪だと思ったから…」
何度も俺じゃない…俺はやってない、って…
なのに社長は俺の言葉なんて、全く信じてくれなかった。
「そしたら一緒にいた弁護士って男が言ったんです。俺が罪を認めれば、母さんの刑を軽くしてやる、って…」
「お母さん…ですか? 調書によれば、貴方と貴方の母親は、幼い頃に別れたきり、長いこと疎遠になっているとの事でしたが…」
岡田の言う通りだ。
俺はその時になるまで、幼い俺を捨てた母さんが、どこでどんな風に生きてきたかすら知らなかったんだから…
それがまさかこんな形で知ることになるなんて…思ってもみなかった。