• テキストサイズ

Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第38章 Apology


「私の質問の仕方が悪かったようですね…」

仕方ない、とばかりに岡田が肩を竦める。

「では質問の仕方を変えましょう。貴方が逮捕拘留された際、私達国選弁護人以外に、貴方に接見を申し出た人はいましたか?」

言われて俺は、もう随分昔の事のように薄れかけた記憶を脳裏に巡らせた。

「確か…喜多川の社長と、それから社長と縁のある弁護士だって人が一人…。それ以外はいなかったと思います」

「なるほど…。ではその時の会話は覚えてますか?」

「はい…」

あの時の会話は、忘れたくたって忘れられる筈がない。

「ではその時の会話を、覚えていり範囲で構いませんので、話して貰えますか?」

「社長は兎に角俺に自白するようにと言いました」

「ほお…、その時貴方はなんと答えたんですか?」

「否定しました。やってもない事を認めたら、それこそ罪だと思ったから…」

何度も俺じゃない…俺はやってない、って…

なのに社長は俺の言葉なんて、全く信じてくれなかった。

「そしたら一緒にいた弁護士って男が言ったんです。俺が罪を認めれば、母さんの刑を軽くしてやる、って…」

「お母さん…ですか? 調書によれば、貴方と貴方の母親は、幼い頃に別れたきり、長いこと疎遠になっているとの事でしたが…」

岡田の言う通りだ。

俺はその時になるまで、幼い俺を捨てた母さんが、どこでどんな風に生きてきたかすら知らなかったんだから…

それがまさかこんな形で知ることになるなんて…思ってもみなかった。
/ 609ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp