第38章 Apology
証言台の上に両手を着き、大きく頷いた岡田の目が、一瞬…だけど、細められる。
そして裁判官の方に向き直ると、
「裁判官、被告人の今の発言は本件とは直接関わりはないと思われます。ですが、今お聞き頂いて分かる通り、櫻井俊氏は被告人に対して、脅しとも取れるような行為を繰り返していたと思われます」
岡田の言葉に、三人の裁判官達が気難しそうな顔を付き合わる。
「それともう一つ…」
「どうぞ…」
裁判官の一人が咳払いをして、眼鏡の端を持ち上げた。
「これは被告人に確認なんですが、貴方は身柄を警察に拘束された当初、犯行を否定していましたよね? ここに当時の調書があるので、それは確かな事だと思いますが…」
そうだ…
最初は何がどうなっているのか分からず、兎に角その場を切り抜けることだけを考えて、否定し続けてきた。
「ですが、その後貴方は、犯行を認める供述をされています。それはどうしてですか? そこに“誰か”…例えば、貴方が絶対に逆らえないような人物の介入があっと…ということはありませんでしたか?」
「意義あり! これは明らかな誘導尋問です」
岡田の質問に、検察官が手のひらで机を叩いて抗議する。
検察側だってこれ以上やり込められるのは本意じゃない、ってことか…
「意義を認めます。弁護人は質問の意図を明確にするように」
これには流石の岡田も大きく息を吐き出すと、小さく首を横に振った。