第37章 Oath
「では…」
と一呼吸置いてから、岡田は両手を後ろで組んだ。
「今回の件に深く関わりのあるとされる喜多川建設と、貴方のお父様である櫻井俊氏が関係していたことはご存じでしたか?」
岡田の質問に、翔が顔を俯かせたまま首を横に振る。
「いえ…、この事件について調べて行くうちに、父が喜多川建設の顧問弁護士に名を連ねていることを知りました。それまでは父の仕事関係について気にしたことはなかったので…」
「なるほど…。その時事を知った時、貴方はどう思われましたか?」
それは俺もずっと気になっていた。
侑李の件を調べて行くうち、少なからず衝撃は受けている筈だ。
でも翔は俺の前では一切口にしたこともなければ、表情に出したこともなかった。
翔はどんな思いでその事実を胸の奥にし舞い込んでいたのか…
俺はずっと気になっていたんだ。
「例えば…そうですね、ショックだった、とか…。後は…不味い事になった、とか…」
岡田が翔の答えを促がす。
それは決して急かすような口調ではなく、翔が答え易いように、極めて落ち着いた口調だった。
「ショック…でした。まさか父さんが関係してるとは思っていなかったので…」
「それで貴方はその事実を、同僚でもある私にも隠した、と…?」
「ええ。知られる訳には行かないと思ったから…。いずれ分かることなのに…」
もしその時に岡田に打ち明けていれば、もしかしたら翔はあんな事件を起こさなくても済んだのか…
全ては過程でしかないのだけれど…