第37章 Oath
「この鑑定結果を見る限り、被告人大野智の体液には、血液の分泌は認められないと言うことになります。と言うことは、初回公判で提出された鑑定書には、嘘の記述…つまり改竄(かいざん)があったんではないかと想像しますが、如何でしょう」
岡田の理路整然とした弁明に苛立ちを隠せなかったのは検察側の人間だ。
「この件に関して検察官の意見はありますか? もしなければ、改竄があったことを“認めた”と言うことになりますが…宜しいですね?」
裁判官が眼鏡の端を持ち上げ、俄に眼光を鋭くする。
問われた検察官は、髪をクシャッと掻き混ぜると、唇を真一文字に結んだ。
これだけハッキリとさた証拠を前にしちゃ、認めざるを得ない…ってとこだろうか…
「では続けて下さい」
「ありがとうございます。では次に提示する証拠ですが…」
裁判官に向かって軽く頭を下げ、岡田が席を立った岡田の手には、ビニールに包まれたマンガ雑誌が握られている。
「櫻井さんにお聞きします。この雑誌に見覚えは?」
「智君が毎月欠かさず読んでいる雑誌です」
「なるほど…。では、被告人は毎月この雑誌を書店またはコンビニ等で購入していた…そういうことですか?」
「いえ違います。智君はいつもその雑誌を、マンションの管理人から貰い受けていましたから…」
毎月管理人さんから貰う雑誌を、俺はいつも楽しみにしていたのは事実だ。
「確か事件当日の朝にも、管理人さんから雑誌を貰ったと言っていたのを記憶しています」
「間違いありませんか?」
「間違いありません」
翔が力強く頷くと同時に、モニターには防犯カメラの映像だろうか…俺が管理人から雑誌を受け取る姿が映し出された。