第37章 Oath
「裁判官、弁護人はここで新たな証拠として、弁第二十号証を提示をしたいのですが」
「許可します」
岡田が足早に弁護人席に戻り、ファイルから二枚の用紙を取り出し、それをプロジェクターを使ってモニターに映し出した。
「これは、以前検察側から提示された、被害女性の体内に残されていたとされる犯人と思しき人物の血液型を特定するための鑑定結果です。これはSe式血液型検査と言って、体液から血液型を特定することの出来る検査でさして、この検査結果を見る限り、どちらも同じように見えますが、良く見てください」
二枚の用紙の上を、岡田の指が忙しなく行き来し、ある一点でピタリと止まった。
「ここ、何か違ってはいませんか?」
裁判官と検察官が食い入るようにモニターを見つめる。
「コチラは大文字のSなのに対して、コチラは小文字のsが表示されています。Se式では、大文字の場合を分泌型、小文字の場合なら非分泌型とするそうです。つまり、分泌型であれば血液型が特定出来、非分泌型であれば、血液型の特定は出来ないと言うことになります」
しんと静まり返った法廷内に、岡田の声と、そして時折硬い床を蹴る踵の音が響く。
「そこで我々は今回、被告人である大野智の唾液から採取したDNAを、再度Se式血液型検査にかけることにしました」
岡田が三枚目の用紙をプロジェクターに映し出す。
「これがその検査結果です。ここをご覧下さい。小文字のsが表記されているのがお分かりでしょうか」
どう言うことだ…
俺と同じ疑問を抱いた人間が、恐らくこの法廷内に何人かいてんだろう…
法廷内が一瞬騒然とした。