第37章 Oath
今でも俺を信じてくれている…
その言葉に目頭が熱くなり、視界が微かに歪み始めた時、
「異議あり」
検察官の声が響いた。
その場にいた人間全ての視線が、一斉に検察官に向けられた。
「それはあくまで証人の主観であり、本件には全く関わりのない事だと思いますが?」
分かってはいたことだが、相変わらず嫌な奴だ。
「意義を認めます。弁護人は質問を変えて下さい」
「はい」
一度は落ち着けた腰を再び上げ、岡田が翔の前に立つ。
「先程貴方は、被告人である彼と肉体関係がある、と仰ってましたが、被告人の女性関係について耳にしたことは?」
「ありませんし、それを疑ったこともないです」
「それはどうしてでしょう。理由をお聞きしても?」
岡田の奴…、いくら必要なこととは言え、答えにくいことをズカズカ突っ込んで来やがる…
尤も、翔だって覚悟の上で証人になったんだろうけど…
「以前彼は言ってたことがあるんです、自分は今まで一度も誰かを抱きたいと言う欲求に駆られたことがない、と…」
そうだ…
あれは翔と友達ではなく、恋人として付き合い始めてすぐの頃だった。
自分が同性愛者であることを自覚した時、一度だけそんなことを言ったような気がする。
「ほお…、では被告人である大野智が、被害女性と性交渉に及ぶことは考えられない、そう言うことですね?」
「はい」
翔が頷く。
その時一瞬、岡田の目の奥がキラリと光ったのを、俺は見逃さなかった。