第37章 Oath
「彼とは…智君とは、小学校時代からの幼馴染みで…」
閉じていた瞼を開き、遠い昔に思いを馳せるように、微かに目尻を下げた。
「智君が施設を出るまでは、ずっと文通をしていた仲です」
まだ幼かった俺達が、唯一近況を知る手段が、当時はそれしかなかった。
それももう今となっては懐かしい思い出だ。
「施設を出てからの関係は?」
「恋人…でした」
一瞬にして騒然となった法廷内に、
「静粛に」
裁判官の檄が飛んだ。
「どうぞ、続けて下さい」
裁判官に促され、一礼してから翔は再び言葉を紡ぎ始めた。
「それより以前から、僕達はお互い思い交わした恋人同士でした。今でもその関係は変わりません」
その口調には、何一つ恥じることのない、覚悟のような…とても力強く俺には聞こえた。
自分が同性愛者であることをカミングアウトするのは、とても勇気のいることだろうに…
もし俺がこんな事件に巻き込まれさえしなければ、もしかしたら一生隠し通せたかもしれないのに…
ごめんな、翔…
「では、貴方と大野智の間に肉体関係は…」
「ありました。恋人同士だったら、当然あって不思議はないでしょうから…」
「成程…。では、恋人である大野智に、別の恋人がいたと聞かされた時、貴方はどう思われましたか?」
俺と結との関係に話が及ぶと、翔の顔が微かに曇る。
そして小さく首を横に振ると、
「ありえない、と…。いや、そんなことある筈がないと…。もしそれが事実であれば、きっと何か、そうしなければならない理由があるんだろうと思いました。俺は彼を信じてますから、今でも…」
穏やかな笑みをその顔に浮かべた。