第37章 Oath
侑李への証人尋問は、俺との関係から、侑李が起こした事件にまで及んだ。
それこそ耳を塞ぎたくなるようなことまで…
でも侑李は容赦のない質問一つ一つにも真摯に向き合い、自分の言葉で答えていった。
きっと相当な覚悟だったんだろうな…
もう俺の後ろをべそ掻きながら着いて回っていた、あの小さな侑李はいないんだ。
そんな侑李の姿に、寂しさと同じくらい、頼もしさも感じた。
そしていよいよ話が喜多川建設が行っていたとされる売春に及んだ時、岡田が何枚かの写真を証拠として提示した。
どの顔も、財界政界問わず、一度は目にしたことのある奴らばかりで、一瞬法廷内がざわつく。
「この中に君の所謂“客”だった人物がいますか?」
「はい、この人と…それからこの人も…」
侑李は目の前に並べられた写真を食い入るように見つめ、そして何枚かの写真を指で差した。
「成程。ありがとうございます。戻って下さってけっこうです」
侑李への尋問が終わり、傍聴席へと戻って行く。
その時、侑李が俺の方を見て、少しだけ頬を綻ばせた。
その目は、俺の見間違いじゃなければ、微かに潤んで見えた。
「続いて弁護側は、被告人と深い関わりのある人物を証人として申請します」
弁護人席に座り、岡田が高々と右手を上げた。
「検察側、異議はありませんか?」
「ありません」
裁判官に問われ、些か不貞腐れた様子の検察側が答えた。
「では、証人は入廷して下さい」
岡田の声をきっかけに、俺が入廷した時と同じ扉がゆっくりと開いた。