第37章 Oath
待合室を出ると、そこから程近い位置に配置されたドアが、警備員の手によって開かれた。
「第五法廷」…ここで俺のこの先の全てが決まる。
俺は一つ深呼吸をすると、顔を上げ、真っ直ぐに前を見据えて法廷内に足を踏み入れた。
何とも言えない緊張感と、重苦しい空気に一瞬圧倒されそうになる。
チラッと弁護人席を見ると、岡田ともう一人、年配の弁護士が何やら言葉を交わしていた。
その顔は、どこか自信に満ち溢れているようにも見えて、岡田と目が合った瞬間、胸の奥に重くのしかかっていた物が、スっと軽くなったような…そんな気さえさした。
被告人席の前に立った俺は、そこで漸く手首にかけられた輪っかと、腰に巻かれたロープから解放される。
ふと後ろの傍聴席を振り返ると、それ程人は多くはないが、見知った顔がいくつもあることに気が付いた。
長瀬さんや侑李、それに松本まで…
どいつも皆一様に目を潤ませてやがる。
馬鹿野郎…、んな目で見られたら、俺まで泣きそうになんじゃんか…
心の中で悪態をつきながら、俺は刑務官の指示で被告人席に腰を下ろした。
それから間もなくして、正面の重厚な扉が開き、一般の裁判員だろうか…数人と、黒いマントを羽織った裁判官が入廷して来た。
その瞬間、俺はゴクリと息を飲み、激しく鼓動し始めた心臓を落ち着かせるため、何度か深呼吸を繰り返した。
そして裁判長が中央の席に着くと同時に、法廷内の全員が立ち上がり、深く頭を下げた。