第37章 Oath
ワンボックスのドアが開き、刑務官の指示で降り立ったのは、地方裁判所の裏口だった。
両隣を同行した刑務官に挟まれ、一般の人間が通ることのない通用口を通り建物の中に入る。
何とも言えない空気感に、緊張で強ばった足が一瞬竦む。
「どうした?」
「いや…なんでも…」
腰に括られたロープが引かれ、俺は慌てて止まっていた足を動かした。
寒々とした長い廊下を警備員の後に付いて抜け、俺に用意されたのは、“被告人待合室”とプレートに書かれた一室だった。
「呼び出しがあるまでここで待つように」
それだけを告げると、警備員はドアを閉め、外から鍵をかけた。
窓一つない部屋に、薄暗く灯る蛍光灯を見上げると、ふと翔のことが脳裏を過ぎる。
翔は今頃どこにいるんだろう…
もしかしてもう近くにいるんだろうか…
俺と同じように、ただぼんやりと天井を眺めているんだろうか…
尤も、近くにいたとしたって、厚い壁に遮られたこの部屋の中では、外の様子すら窺い知ることは出来ないんだけど…
俺はカチカチと時を刻み続ける秒針の音だけが響く部屋で、ゆっくりと瞼を閉じ、息を吸い込んだ。
どれくらいの間そうしていただろう…
外からかけられた鍵が外され、扉が開いた。
そして、
「時間だ、出なさい」
警備員の声に、二人の刑務官がスっと立ち上がった。
いよいよだ…
いよいよ始まるんだ、俺の最後になるかもしれない闘いが…