第37章 Oath
一つ二つと、鍵のかかった鉄格子を抜けて行く。
その度に、流行る気持ちと一緒に、足取りが軽くなって行くような気がした。
そしてとうとう最後の鉄格子を抜けた時、俺の腰にロープが巻き付けられ、その先端を同行していた刑務官が握った。
こんなことしなくたって逃げやしないのに…
それにこの足じゃ、例え逃げ出したとしてもすぐに捕まるのが落ちだ。
ただ、これも決りだと言われればそれまでなんだろうけど…
「乗りなさい」
通用口の前に停まっていたワンボックスカーのドアが開き、刑務官が俺の背中を押す。
ワンボックスカーとは言っても、それはやっぱり犯罪者を輸送するための物、車内には運転席と後部座席との間にしっかり鉄格子は嵌められているし、窓だって目隠しがされている。
形(なり)は小さいが、バスとそう大した変わりはない。
俺はふと目隠しの向こうに薄らと見える、聳え立つ灰色の建物を振り返った。
すると不思議なことに、これまでの出来事が走馬灯のように頭の中を駆け巡って、俺は自然と目頭が熱くなるのを感じた。
いい思い出なんて、一つだってありはしないのに…
もしあるとすれば、人に仲間と呼べる奴等に出会えたことくらいだろうか…
松本にしても二宮にしても、それからマサキも…
井ノ原や長野もかな…
それ以外には、寧ろ辛いことばかりだったのに、これが見納めになるかもしれないと思うと、感慨深くもなるからおかしなもんだ。