第36章 Hope
俺の手元に裁判所からの召喚状が届いのは、それから数週間が経った頃だった。
召喚状が届いたということは、智君の無罪に向けての審理が動き出したということ…。
いよいよだ…
長かった戦いが漸く終わる。
そう思っただけで、それまで黒く澱んで見えた世界が、パッと明るく開けたような…そんな気がした。
俺は深山さんが差し入れてくれた読みかけの小説を開いた。
そしてそこに栞代わりに挟んだあの写真を手に取った。
「智君…、あと少しだから…。この裁判さえ上手く行けば君は晴れて自由の身になる。そうしたら…」
その時俺は…
裁判所への召喚を数日後に控えたある日、智君が弟のように可愛がっていた侑李が俺の元を尋ねた。
侑李は俺を見るなり大粒の涙を目に浮かべ、何度も鼻を啜った。
「おいおい、そんな顔すんなって…、な?」
「だ、だって…、ニュースや新聞なんかで聞いてはいたけど、でもやっぱり信じられなくて…」
無理もない、か…
侑李と最後に会った時には、自分がまさかこんなことになるなんて、俺自身想像もしていなかったんだから…
「ところで、君も立つんだってな、証言台に…」
「はい。少しでも智兄ちゃんの助けになるなら…」
少しどころか、侑李は喜多川建設の児童買春の容疑には深く関わっている。
当然、顧客の情報だって知ってるだろうし…
重要な証言が得られるのは間違いない。
侑李の証言があれば…