第36章 Hope
「良く決心されましたね」
佐田弁護士がアクリル板の向こうで満足気な笑を浮かべる。
やっぱりこの人は深山さんとコンビを組むだけあって、なかなか食えない人だ…
「それで…ですね、今後のことなんですがね、私の伝え聞いたところによると…」
親指と人差し指を舌で湿らせ、手帳のページを捲る。
アナログなところは、もしかしたら岡田に似ているかもしれないな。
尤も、岡田は舌で指を湿らせたりはしないけど…
「えっと…」
「まず大野さんの件が解決して、それから示談交渉に入る、ってことで良かったんですよね?」
手帳のページを行ったり来たりを繰り返す佐田弁護士に変わって、深山さんが口を開く。
本当に面白いコンビだ。
「ええ、そうじゃないと意味がないんで…」
俺が証言台に立つのは、当然智君のアリバイを証明することではあるけれど、同時に父さんの悪事を明らかにすること…それが目的でもある。
父さんと喜多川建設の罪を白日のもとにし、その上で僕は父さんに許しを請うんだ。
父さんが二度と智君に手を出せないように…
「でもそれだと示談交渉までにけっこうな時間がかかるんじゃ? 再審だってどれだけ時間がかかるか分からないし…」
「いいんです、どれだけ時間がかかっても…」
智君が冤罪を勝ち取り、そして父さんを僕らの…いや、智君の前に跪かせることが出来れば…
それだけでいい。