第36章 Hope
それから程なくして、智君の再審請求が無事裁判所を通過したとの知らせを、接見に来た深山さんの口から聞かされた。
通常ならば、手続きに相当な時間を要するんだろうけど、ICレコーダーを含む数点の決定的な証拠と、いくつかのアリバイ証言が幸をそうした…と言ったところだろう。
そしてもう一つ…
これまで智君の関わったとされる事件を担当していた検事が、どういうわけだか突然移動になり、その代わりに小栗さんが智君の担当検事になったことが、大きな要因になっているのかもしれない。
あの人は検事にしては珍しく俺達弁護士に対して好意的だし、被告人に対しても然り、だ。
これで上手く行く。
俺はそう確信して、ホッと胸を撫で下ろした。
後は俺が…俺自身が覚悟を決める番だ。
俺は数日悩んだ後、看守を通じて、担当弁護士への接見を申し出た。
勿論、証言台に立つことと、父さんからの示談の申し出を受けるためだ。
でもそれは今すぐにじゃあない。
智君が無事冤罪を勝ち取り、無罪を手にしてから…それからだ。
岡田のことだ、きっとそれまでに喜多川建設絡みの件も上手いこと処理してくれる筈だ。
そうなれば父さんも当然…
結局自分の手で父さんを裁くことは出来なくなってしまったけど、でもこれで良かったんだ。
これで…
あと少しだ…
もう少しで全てが終わる。
ねぇ、智君…?
それまで待っててくれるかな…