第36章 Hope
岡田と母さんが面会に訪れた日の夜、俺は父さんに宛てた手紙を認めた。
別に今更積年の恨み辛みを…なんて気持ちは更々なくて、ただ俺が今までどんな思いでいたのか…
そして圧倒的な権力の前で、俺がどれだけ惨めな思いをしてきたのか…父さんに少しでも知って貰いたかった。
でもそこに謝罪の言葉は勿論のこと、自らの罪を悔いるような文言は、一文字も記すことは出来なかった。
罪は罪…
認めていないわけじゃない。
俺だって自分の行為が正しいことなのか、正しくないことなのかは、十分理解出来る。
でも…罪を冒したのは何も俺だけじゃない。
父さんだって…
智君を苦しめた罪は、例え父さんが死んで詫びたとしたって、やっぱり許せる事じゃない。
それでも俺はどこかで期待してたんだ…
父さんが自らの罪を認め、心から反省してくれるのを…
なのに父さんは…
明らかな証拠があるにも関わらず、ICレコーダーに残された音声データを、自分の物ではないと言い張ったらしい。
尤も、そんな適当な言い逃れが通用する筈もなく、声紋鑑定の結果、ICレコーダーに残された音声データが俺と、そして父さんの物だとした鑑定書が突き付けられるまで、父さんは一切の罪を認めようとはしなかった。
それどころか、俺に対して示談の話を持ちかけてくるんだから、もう性根まで腐りきっているとしか、俺には思えなかった。