• テキストサイズ

Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第36章 Hope


分かった、と言ったきり、岡田がそのことを口にすることはなかった。

母さんが隣にいた、ってこともあるのかもしれないな…

「そう言えば…、お前の弁護、佐田さんがつくそうだな? 深山から聞いたぞ?」

「ああ、うん…。どうしても、って押し切られて…」

深山さんの上司ってことだから、佐田弁護士も相当な変わり者なのかもな…

しかも相手の懐に入り込むのが妙に上手いから中々だ。

「まああの二人に任せておけば安心だな。なんたって、業界ではちょっとした有名人だからな、あの二人…。いい意味でも悪い意味でも、な?」

「だろうな…?」

俺達はアクリル板越しに顔を見合わせて、ほぼ同時に吹き出した。

そんな俺達の様子を見て、母さんが目尻に溜まった涙を、ずっと握り締めていたハンカチで拭った。

「母さん…?」

「何でもないのよ…? ただね、久しぶりにあなたの笑った顔が見れて、安心しちゃったのね…。おかしいわね…」

ごめん母さん…

俺と父さんの間で、きっと母さんは苦しんだよね?

本当にごめん…

「時間だ」

面会時間の終了を告げる声が、無情に響く。

「あらもう…? あっという間なのね…。ねぇ、翔? また来ても良いかしら?」

岡田に促され席を立った母さんが俺を振り返り、俺を窺うように少しやつれた顔に笑を浮かべた。

でも俺は、

「もう来ないで? 俺より父さんの傍にいてあげてよ。俺は大丈夫だから」

首を横に振ると、決意が揺らがないよう、母さんと岡田に背を向けた。
/ 609ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp