第36章 Hope
警察署内に留置された俺は、一睡もすることなく、変わりゆく空を見上げていた。
星一つ見えない夜空が、まるでブラックホールのように見えて、一瞬…だけど、このまま全部呑み込んでくれたらいいのに、なんてことを思った。
でもそしたら、きっともう永遠に智君に会うことも出来なくなるんだよな…
そう思ったら何だか悔しくて…
そもそも、智君のためとは言え、こんな事件を起こした俺に、智君が会ってくれるかどうかも分からないのに、ただただ悔しさが込み上げてきて…
やがて空が白み始めた頃には、俺の頬を幾筋もの涙が濡らしていた。
間違ってはいなかった筈。
俺は何一つ間違ったことはしていない。
でももし…もしも、俺に非があるとしたら、それは俺自身の弱さ…なのかもしれない。
事件の翌日、俺の元を深山さんが訪ねて来た。
深山さんはあろう事か俺の弁護を引き受けると言った。
俺は最初断ったが、深山さんの上司、佐田弁護士の説得もあって、深山さんに俺の弁護をお願いすることにした。
「どうです? 少しは眠れましたか?」
始めて見る佐田弁護士は、俺が思っていた以上に人の良さそうな顔をしていて、恐らくは目の下に隈を作っているであろう俺を見るなり、柔らかな口調で言った。
「いえ…、あまり…」
「まあ、そりゃそうですよね…。でもね、櫻井さん? まだまだ先は長いですからね、無理にでも休まないとね?」
「そうですね…」
それは俺自身、一番良く分かっていることでもあった。