第35章 shrieking
俺は日々の刑務作業をこなしながら、岡田からの連絡をひたすら待った。
勿論、再審通過のことは気になっていたが、それ以上に翔の様子が気になっていた。
頭の中は、いつだって翔のことでいっぱいだった。
ちゃんと飯は食ってるか?
ちゃんと眠れてんのか?
一人で泣いてないよな?
心の中で何度も問いかけた。
そうしていれば…、強く想っていれば、いつか翔が答えてくれんじゃないか、って思っていた。
「元気そうで安心したよ」
訪ねて来たのは、以前世話になった刑務所の刑務官でもあった長野だった。
井ノ原から聞いた話によると、現在は違う刑務所で、刑務官として勤務しているそうで、その長野が俺を訪ねて来るとは、思いもしなかった。
「ああ、まあな…」
プライベートだとは分かっていても、やはり刑務官だと思うと、自然と緊張してしまうのは、もうどうしようもないこと…なんだろうか…
「実はな、本当は許される事じゃないんだけど…」
そこまで言って、長野が急に声を潜めた。
「こんなことお前に言っていいものかどうか、正直迷ったんだけどな…」
どうにも煮え切らない長野の口調に、次第に苛立ちが込み上げて来る。
「なんだよ、ハッキリ言えよ…」
今更何を聞かされたって、これ以上驚くこともなければ、心を打ちのめされるようなショックなことなんて、俺にはもう何もない。
「分かった、分かった、言うからそんな怖い顔すんなよ。可愛い顔が台無しだぞ?」
「だ、誰が…可愛いって…」
冗談を言う長野の顔は、俺の知っている、少しだけ気の弱そうな、でも意思の強いような…、そんな顔をしていた。