第35章 shrieking
「翔が証言台に立つ可能性は…?」
アイツはそのために弁護士バッジを外すことも厭わないと言った。
でも今は状況が違う。
翔は俺と同じ、囚われの身だ。
仮に証人申請をしたところで、それがすんなり通るのかどうか…
「何とも言えんが、別件で拘留中の被疑者が証言台に立った例が無いわけではないから、可能と言えば可能だろうな…」
「そっか…、だったらその時に翔に会えるんだな…」
別に翔の証言が欲しいわけじゃない。
ただ、どんな形にせよ、翔に会いたい…それだけだった。
「一応掛け合ってはみるが、期待はするなよ? 櫻井がyesと言わん限りは…」
「分かってるよ…。分かってるけどさ、心配なんだよ、翔のことが…。アイツ、あれで案外弱いとこあるから、一人で泣いてんじゃねぇか、って…。自分を責めてんじゃねぇか、って…」
翔のことを考えると、夜もろくすっぽ眠れねぇんだよ…
一目でいい。
例え触れることが出来なくても、言葉を交わすことが出来なくても、一目アイツの姿を見るだけで俺は…
「お前の気持ちは分かった。取り敢えず、近々俺の方から櫻井に面会を申し出てみるから、それまでは…お前も辛いだろうが、堪えろ。いいな?」
俺は岡田の言葉に黙って頷いた。
その時丁度、刑務官が接見時間の終了を告げた。
「岡田、頼む…」
今の俺には、岡田以外に頼れる相手はいないんだ。
「ああ、俺に任せろ」
力強い岡田の答えを聞いて、俺は漸く重い腰を上げた。