第5章 Rule
就寝の準備を済ませ、点呼を終えると房内の照明が落とされた。
俺に与えられたのはトイレのすぐ横の場所。
新入りはここが定位置のようだ。
疲れた…
布団に潜り込み、目を閉じると、連日悪夢にうなされたせいか、一気に睡魔が押し寄せてきた。
とにかく眠りたかった…
なのに…
「おい、マサキ…」
感情を殺した二宮の声。
それに応えるように、俺の隣でマサキがモソモソと動き出す。
布団から抜け出し、房の入り口…鉄の扉の前に立つと、そこにガムテープでタオルを張り付けた。
俺はそれを薄っすら開けた瞼の隙間から見ていた。
目隠し…のつもりか?
何が始まるんだ?
そう思った瞬間、俺の布団が捲り上げられた。
「なっ…⁉」
声を上げようと開いた口は、二宮の手に塞がれる。
松本がノロノロと布団から起き上がり、俺を見下ろす。
「静かにしねぇか? 大人しくしてりゃ、すぐ済むからよ? …なぁ、大野?」
忘れかけていた恐怖が蘇る。
俺を見下ろす松本の目…アイツと同じ目だ。
暗く狭い独房で、散々俺を弄んだアイツの目…
見開いた瞳に涙が浮かぶ。
やめてくれ…!
訴えても叶う筈のない言葉が浮かんでは虚しく消えて行く。
助けて…翔…!